第50回 日本伝統鍼灸学会学術大会 東京大会

令和4年10月29日、30日の2日間にわたって、東京タワーホール船堀にて、第50回日本伝統鍼灸学会学
術大会(東京大会)が開催された。南雲治療院を代表して玉田萌菜が参加したので報告する。
大会テーマは、「氣と意識 伝統鍼灸の本質に迫る」であった。

1.意識について
人間が一定の時間内に処理する能力には限界がある
情報の取捨選択を行う必要がある
意図して特定の情報に注意を向ける
心理的エネルギーを意図して注ぐ
患者の状態
気の感覚、変化を意識する
 望診 呼吸、色沢
 聞診 息遣い、声
 問診 感覚の変化を問う
切診 皮膚の変化
感受性
個人差があり、感受性の高い理解度の早い方がいる
音、光に敏感な人がいるように、気の感覚に敏感な人もいる。
訓練されて感受性は高まり、気の感覚は得られる
治療における気の感覚を獲得するための意識の使い方
まずは型を覚える、感覚を共有する、体験し、自分の状態、身体感覚を内省する。
他人の痛みはわからない。自分の経験と重ね合わせてどのくらい痛いのか考える。

2.人体場から観た意識 氣と九鍼
意識は情報、言霊、エネルギーで成り立っていて、この宇宙空間全てに満ちている。
意識には階層(次元)がある
 第一階層 
固体、液体、氣体場へのアプローチ(自然治癒力)
固体)皮膚、神経、筋肉、骨、臓腑、菅(鍼灸、あん摩、マッサージ)
液体)血液、リンパ液、体液(刺絡、漢方、ヒポクラテス医学、アーユルベーダ、海水療法)
氣体)オーラ層の中で営衛の気と神智学のエーテル層(鍼灸、氣功、ハンドヒーリング、漢方)
西洋医学)手術、滅菌除菌、抗ウイルス、ワクチン、有機合成医薬品
心と生活のあり方 呼吸法、食養、身体の操作、環境
五臓、七情、五神乱れ、異常などが起きたときは、第一階層へアプローチ
第二階層
過去のネガティブ感情解放へのアプローチ
1、情動主因
2、精神、思考主因、
3、第一階層へのアプローチ(鍼灸、漢方で自ら情動に気づき解放されることもあり。)身体場が整う
と感情
の抑圧に気づく。
第三階層
意識、無意識場および自我、神我へのアプローチ
知識
今、真理(ハートでキャッチ)
  過去、思い出す

  未来、思い描く(過去を基準とする)
例)職場拒否
耳を塞ぎたい→突発性難聴
職場に行きたくない→膝、股関節痛→歩行困難
顕在と潜在意識の関係 顕在(大丈夫かな、不安、恐れ)
           潜在(ネガティブ現実を引き寄せる)
メンタル面、思考場療法、倫理療法、内観法、催眠療法、鎮魂、祓いなど
第四階層 
神と魂の結び、除霊へのアプローチ
 神、魂の結び(行、道)の実践、内観法、催眠療法
 除霊、火鍼(大椎穴傍)、灸
第五階層
魂、霊、神、創造意志発動へ
聖書 ヨハネ第1章1−5「原始に言霊あり、言霊は神と偕にあり、言霊神なり。この言霊は原始とともに
あり」が参考となる。

3.食養
基本 1感謝 2、無駄に出来ない(同じ命) 3、よく噛んで美味しく頂く(30〜100回噛む)
概念 1、食本主義 2、穀食主義 3、身土不二 4、一物全体食 5、陰陽調和論 6、少食
流派 1、西洋、2 、桜沢式 3、中国伝統医学 4、アーユルヴェーダ 5、現代栄養学 
   陰陽論の違い、水の量3合〜3リットル、火加熱食と生食、1〜3食の違いあり。
重要事項
腸造血説、ミトコンドリア生命源説
☆「腸内環境=命の生命源説」
ソマチッド最小生命体説、経絡増血説、海水療法
4.季節の特徴(日本の四季)
春(肝)散・弁・風
    ゆったり、リラックス、下肢の冷え注意
    衣類、布団、住居など
梅雨(脾・胃)湿(冷え、温)
      足冷、湿気に注意
      除湿、通気、微温or冷
夏(心)大散、暑湿
    新陳代謝、発汗、心の解放
    涼しさ、除湿、発汗、通気性
秋(肺)収、降、涼、燥、清
    通気、涼、燥に注意、保湿
    保温、保湿、通気、潤
冬(腎)大寒、収、燥、閉
    陰気盛ん、乾燥しやすい、気持ち締まる
    保温(暖房→温めすぎ注意)保湿、潤い、丹田
 
5.鍼灸と意識
臨床の中での意識
 経穴の選択(直感、直観)
 気の誘導
 意図即鍼灸
 安心と自信と予測

鍼灸と言霊
補瀉
補+イメージ鍼→気入る、温感(穴、経脈ラインへ)
瀉+イメージ鍼→気抜ける、涼感(穴周辺へ)
灸頭鍼+イメージ鍼→局部、経脈ラインに温感生ずる

6.鍼灸と九鍼
「40歳男性 主訴肩関節痛、挙上時辛い、今の辛さを5とする」
血海へ指でタッチ→5→2.5
血海へイメージ員利鍼→5→1
血海へイメージ金鍼30番5→5以上(悪化)
血海へイメージ員利鍼(約2分)→5→0.5
条口から承山へ金、長鍼で透刺イメージ→0.5→0
条口から承山へ長鍼刺入→0.5→0
選穴、使う道具によって、どのくらい痛みを緩和させられるか変わる。
悪化させてしまうこともあるため、大切。

7.気、衛気と営気について
営気は脈中、衛気は脈外の浅い部分に存在している。
「浮気」という表現は体表を離れた部位にも衛気がある、とも直観できる。
水穀から営気と衛気を生成 真気の一部=元来一気
接触せずとも衛気を動かせるということから、衛気に注目。
古代九鍼は刺入しないため、直接的には衛気にアプローチすることになる。
体表に多く存在し、素早くイレギュラーに動く。
→より、うまく捉える必要がある。
1穴で最大の効果を上げるために、三因制宣、多面的観察、四診合参、病因病理、弁証、標本主従、緩
急、および穴位効能について認識の深化、向上が重要。
古代鍼が適応するか否かにの判断も必要。
無心、無意識で自在に扱えるように心身ともに修練が重要。(古代鍼に置き換えた場合鍼そのものを扱
う  
ことはもちろんのこと、無意識で気、衛気の動きを察知しそれに即応できるようになることが必要。)
患者さんとの術者の治神も非常に大事。
営気に対しては相対的に陽であり、温区作用が強い。
→あたたかい手で触れることが大事。
  腠理の開閉に関わり、腠理を緻密にさせることより、外邪から守る。
→衛気が抵抗しないようアプローチする必要がある。

8.鍼と衛気の動きの関係
鍼体が細く、先端が鋭利であるほど衛気が過敏に素早く反応。
鍼体が太く、先端が丸いほど衛気はゆっくりと反応する。
金鍼→温補しやすい
銀鍼→涼瀉しやすい
ステンレス製鍼→寒熱補瀉いずれにも用いやすい
古代鍼とは大天地、天円地方を象り、小天地である。
人体の真気を衛気を通じて自在に的確に操ることができる刺入しない鍼具である。
鍼の近づけ方

鍼を垂直に素早く近づけややゆっくり離す→気が散り、冷える (瀉法)
鍼を伏せてゆっくり近づけ素早く離す→気が集まり温まる。(補法)
衛気を体感する方法
手のひらを合わせてから左手の労宮に右手の2指を(指先の方ででスッと)瀉法で近づけると冷たく感
じ、
同じく手のひらを合わせてから左手の労宮に右手の2指を(ゆっくり指の腹で)補法で近づけると暖か
く         
感じる。というのが、実際にやってみて違いが感じやすかった。
さらに上記のことを、手のひらを合わせた後、手の甲を叩いてからやってみると、暖かさ、冷たさが感
じ 
にくくなるのがわかった。←衛気の働きによるもの。

9.経絡治療の本質
黄帝内経にある標本概念に基づいた診断、治療の再編を行う。病の本質病の先後、病の重要度等による
病態把握
過去の怪我の不完全治療部が本治となることの指摘
四診合算により、病因、症状、病位、病勢、病の軽重、予後、治療方針と方法等を診断する。
病位では、経脈病証、絡脈病証、経筋病証、臓腑病証を判別することの重要性を指摘
病因と病の伝変の関係を捉えることの重要性を指摘
本治法に用いる経絡経穴の枠を広げる。
兪墓穴、要穴、以外の重要経穴(例 関元、百会)
任脈、督脈、衝脈の重要性
この三脈は生命の中枢になっており、最も重要な本治に関与していると考えられる。
治療手段の枠を広げる、豪鍼に限定せず、例えば、刺絡治療等の重要性。


最後に
今回はこのような機会をいただきまして、ありがとうございました。
とても大きな学会で、テーマである氣についてはもちろんですが、伝統的にな治療法をわかりやすく聞
くことができました。的確な選穴、選鍼が無心、無意識で自在に扱えるように心身ともに修練が重要だ
とありましたが、本当にその通りなので頑張りたいと思います。

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